『波乱の時代(上)』を読んで

『波乱の時代』読み終わりました。
アメリカの経済史についてもう少し知識があったら
楽しくもっと楽しく読めたんだろうな…と思います。


今なんとなく「経済史」って言葉を使ったけど、
自叙伝が「経済史」になるんだからすごいですよね。
グリーンスパンFRB議長に就任したのが1987年ですよ!
僕が生まれたのが1986年だから、
僕が生まれてからほぼずっと、グリーンスパン
アメリカ経済、いや、世界経済を
事実上支配していたわけです。
すごいですよね…。


2006年に退任するまで約20年間にわたって議長の職を
務めるわけですが、長い…。
とにかく長い!本当によくストレスで倒れなかったなって思います。


ところで、FRBの任務とは、本書の記述を借りれば、
「成長と雇用を持続可能な範囲で長期的に最大限に高めるのに必要な金融状況を作りだすこと」(160項)だそうです。
要するに「物価の安定」と「インフレの抑制」です。


公定歩合を決定する際にいろんな難しさがあって、
例えば物価の安定って何の物価?野菜の値段?雑誌の値段?
不動産価格?株価?って具合にいろんな指標があるわけです。


インフレ抑制にしても、理論上はインフレ率と失業率は
トレード・オフの関係にあるからどっちを優先するか政治的な
判断が必要になります。


だから議長としての主観的な裁量を政策に織り込んでしまうと
議会やホワイトハウス、そしてマスコミから結果として
批判されることになってしまう。
事実、グリーンスパンLTCMを救済する措置を取った時や
クリントン政権下で財政赤字を削減する予算案をつくるよう
助言した時など結構批判をくらっています。


だからそういうのがメンドクサイのでマネタリストみたいに
k%ルールを唱えたり、バーナンキみたいにインフレ・ターゲット
を主張したくなるんでしょうね。
ある意味これは当然の帰結


グリーンスパンも政策決定に際しては計量分析の結果を
そのまま鵜呑みにしてないで慎重に損益を計算して
利上げ/利下げの判断をしているって書いているし、
一国の経済政策を担う中央銀行家としてこの手の
政策は独特の難しさがありますね。