日本がアルゼンチンタンゴを踊る日

はじめての金融 (有斐閣ブックス)

はじめての金融 (有斐閣ブックス)

金融について理論、制度、歴史、学界の動向などバランスよく勉強できます。
一番ためになったのは「制度」の部分。自分無知でした…。


例えば財政法第4条第1項によると、「国の歳出は公債または借金以外の借入金以外の歳出で賄わなければならない」のだそうです。


え!?でも「赤字国債」ってあるじゃん??


実はこの法律には但し書きがあって、
「但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、
国会の議決を得た範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」
となってるんだそうです。


この但し書きを根拠に発行された国債を「建設国債」というそうです。
さらに、その年の支出が税金だけでは穴埋めできないときは、
今年だけは緊急に国債を発行するという臨時的な法律を作って
しまうのだそうで、これが「赤字国債」なんだって。


なんでこんな法律があるかというと、国債は日銀が
引き受けることが多いから国債ばかり発行していると
インフレ気味になっちゃうからだそうです。
でも、現実には国債はバンバン発行され、財政赤字
ものすごいものになってます。


じゃ財政赤字の何が悪いかと言うと、実はそんなに悪くない。
慶応の竹森俊平先生の本によると、
国が債務を負う場合、満期の来た国債を新発公債で賄うという
ロールオーバーという選択肢があり、しかも個人には寿命があっても
国には寿命がないので、実質上ロールオーバーをいつまでも続けていれば
債務の返済はいつまでも先延ばせる。要するに新発公債が市場で
消化され続ければ国は全額の債務を返済する必要はない。

(『経済論戦は甦る』154項)


それに、アジア通貨危機のときみたいに外貨建て債務が多いと
自国通貨が減価したときに債務が大幅に膨れ上がって、
このバランスシート効果でいっきに固定相場制に追い込まれる
ということがあるだろうけど、日本の場合はすべて国内で
債務を調達しているのでその心配はない。


こんなに財政赤字がすごいのに、日本の金利が依然として
諸外国に比べて低いのは、国際的に「日本で資産運用するのは安全だ」
と判断されているからという解釈だって可能。
ちょっと前にムーディーズかスタンダードプアーズだったか
忘れたけどどっかの格付け機関が、財政赤字を理由に日本の
格付けをボツワナ以下に判定したことがあったけど、
市場はそれにほとんど反応しなかった。


じゃ、日本がアルゼンチンタンゴを踊る日は、
短期的にはまずないんでしょうか。
長期的にあったとしても、ケインズを言葉を借りれば
「長期的には我々は皆死んでい」ますからね。