ブッシュの愚行とアメリカの貿易赤字

スティグリッツ教授の経済教室―グローバル経済のトピックスを読み解く

スティグリッツ教授の経済教室―グローバル経済のトピックスを読み解く

スティグリッツ教授がグローバリゼーションとブッシュ大統領の政策を批判している。


彼が批判している政策に
(1)高所得者優遇の減税政策
(2)イラク戦争
を挙げている。


何が悪いかと言うとそれが結果としてアメリカの財政をさらに悪化させることになったからだ。


(1)については、クリントン時代の遺産で2300億ドルの黒字があることを
理由に減税によって景気を刺激しようとしたが、
金持ちにお金をバラまいただけで
結果として景気を刺激しなかった。
(2)についてはイラク戦争の戦費負担で財政が破綻しつつあるというもの。


財政赤字貿易赤字と密接に関連している。
国民所得勘定の恒等式
Y=C+I+G+NX・・・・・・・・・・・・・・・・・[1]
と表現できるが、[1]を変形すると
Y-C-G=I+NX・・・・・・・・・・・・・・・・[2]
Y-C-G=Sだから、
S=I+NX・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・[3]
[3]をさらに変形すると、
S-I=NX・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・[4]
となる。


[4]式はS貯蓄とI投資の差額がNX純輸出となることを言っている。
つまり、貯蓄が投資に注ぎ込む額よりも小さければ
不足分を海外から補わなければならず、
貿易赤字になるということだ。


国民貯蓄は民間貯蓄と政府貯蓄から成るから、
財政赤字貿易赤字に直結するというロジックだ。


では、貿易赤字の何が悪いかと言うと、
多くのアメリカ人が指摘するのは、
アメリカ人が国内よりも海外の財を多く消費する
ということは、実質的にアウトソーシングをする
ことになり、アメリカの失業率が上がるというようなこと。


しかし、短期的には上の指摘は正しいが、
長期的には貿易赤字と失業率はほとんど関係ない
ということが実証されている。


ニクソン政権での大統領経済顧問委員長だった
ハーバード・スタインは貿易赤字は問題ではない
とはっきり言い切った。
現在でも同じように考える人は少数だがいる。


では、貿易赤字の何が悪いのか。言えることは、
(1)将来外国人に金利を支払う必要があること。
(2)アメリカが巨大な債務国になるわけだから、
  海外の投資家が不安に襲われるたびに金融危機
  リスクが発生すること。
(3)アメリカの資産が外国人の持ち物になって、
  アメリカの国家主権が脅かされるようになること。


しかし、これらのコストは確実に発生するが、
絶望的なことではないとクルーグマンは主張している。